第18話「それぞれの疑問 そして……」 (03/09/22)
おや?
「ん?」

これはこれは

「起きていたのか」
 LondはCrioを振り返った。

娘はどうなった

「娘は?」
「開口一番、それか。
 大丈夫。Tubomiちゃんなら隣の部屋で寝ている」
「そうか」
 Londは安堵した。

う〜む

「しかし、だいぶうなされているぞ」
「…………」
「なぜ、うなされているのか分かるかい?」
 LondはCrioを見た。

そりゃ悩むだろう

「自分が父と思っていた人が、本当の父なのかどうかで悩んでいるんだ」
「…………」
「どうなんだ?」
 CrioはLondを問いつめた。

…………

「正直なところ、分からない」
「分からない?」
「答えとしては、半々だ」

ん?

「じゃぁ、あんたの娘である可能性はあるんだな」

もちろん

「あぁ」
「なら、自信を持って抱きしめてやればいい」
「あぁ……」

それで

「それで、Carlanはどこへ行った?」
「Carlan氏は大統領府へ行った。おそらく、辞職届でも出しに行ったのだろう」
 LondはCrioを鋭い視線で見た。

どうするつもりだ

「Carlanをどうするつもりだ? あんたの言う、引退の特ダネにするつもりか?」

さぁ
「どうだろう……」

話は複雑だからな

「ただ、人を殺したとはいえ、病気の娘の為。
 それでいて、娘さんを救えなかった。
 親友だったPerdelを殺してまでも救いたかった娘が亡くなり、彼は贖罪に、手に入れた金を多くの人々の命を救うために使った」
「…………」
「これでは、彼の同情を買うネタにしかならない」

つまらんよ

「ぼくは、もっとドロドロとした特ダネを最後に引退したいんだ」

ふふ

 Londは笑った。
「ありがとう」
 Crioは照れた。

そう言えば

 Londは考え深げな顔をした。
「そう言えば、Crio殿はなぜ今回のネタをかぎつけた」
「あぁ、そう言えば、話の途中で見せ損ねたなぁ〜」
 CrioはLondに革袋から取り出した手紙を渡した。

これは……

「これは!?」
「ぼく宛に届けられた手紙だ」
 そこに書かれていたのは、断片的ではあるが、20年前のあの出来事だった。
 Carlanが不正をしたこと。Perdelが臥竜の滝下降口付近で斬首されたこと。そして、殺した人物がこの、わたしであること。

……

「これは……」
「差出人不明の手紙だ。
 不明ではあるが、これについて色々と調べてみると、まんざらガセネタでないことが分かってきたんだ」
 Crioは続けた。
「20年前の貿易記帳をこっそり調べてみたら、僅かではあるが、水増ししたような箇所が見受けられた。
 これはガセネタではないぞ、っと思ったわけさ」

この文面……

「しかし……、この文面といい……、文字の癖といい……」
 Londの額から一筋の汗が流れた。

おや?

「ん?」
「Tubomiちゃんが目覚めたわ」
「ありがとう」

さぁさぁ

 CrioはLondを振り返った。
「さて、親子の対面と行こうじゃないか」
「あぁ……」

お父さん……

「お父さん……」
「Tubomi……」

うっうっ……

 TubomiはLondに抱きついた。
「お父さん。
 お父さんが、わたしの本当のお父さんじゃなくても良いから、お父さんって呼ばせて」
 TubomiはLondの胸の中で泣きじゃくった。

心配するな

「Tubomi……。
 お前は、わたしの娘だ」
「ホントにほんと?」
「あぁ」
「わたしが保証しよう……」

保証する

「お前は、間違いなく、Londの娘だ」

Face

「Face……」
「Faceさん……」

どうする……

「Face、これからどうするつもりだ……」
「また、気ままな旅をするつもりだ」
「そうか……」
 Faceは部屋から出て行った。

お父さんは……

 LondはTubomiに言った。
「Tubomi。父さんは少し調べなくてはならないことがある」
「どこへ行くの?」
「ちょっとな」
「すぐ戻ってくる?」
「あぁ、出来る限り」

お父さんは……

 LondはCrioを手招きした。
「Crio殿、少し話したいことがある」
「ん?」
 LondはCrioと共に部屋を出た。

話って

「なんだい?」
「もし、わたしの身に何かがあったら、Tubomiをよろしく頼む」
「どういう意味だ」
「理由は訊かないでくれ」
 LondはCrioの前から立ち去った。

いったい……

「いったい、何をするつもりだ……」

Ryokoさん

「ねぇ、Ryokoさん。ちょっと聞いて欲しいことがあるんだけど」
「もしかして、昨日のこと?」
 Tubomiは頷いた。

おかしいよ

「Carlanさん、Ryokoさんからあれは幻覚だったって聞いたら、なんか、突然自分がやったこと認めちゃって……」
「うん……、そうね」
「Ryokoさんは、あれが本当に幻覚だと思いこんでるの?」
「そうとしか、答えが見つからないけど、少し、引っかかることがあるの」
「なに?」
「これなんだけど……」

――十数分後――
やぁ

「やぁ、Carlan」
「……Londは?」
「ちょっと前に出て行ったよ。
 なにか、怖い顔をして」
 Carlanは眉間にしわを寄せて考え込んだ。
「Crio殿、少し聞いて貰いたいことがあるのだが」
「なんだい?」
「聞いて驚くかも知れないが……」

――ラテーヌ高原――
ガサ

 Faceは背後から歩み寄る足音に気づいた。
 「やはり、来たか……」

ロンド

 「Lond……」
  LondはFaceを見据えて、静かに開口した。
 「お前だったんだな……」

パーデル!?

 「Perdel……」

 続く……。