第16話「虚偽と真実」 (03/09/01) |
わたしは、バストゥークに戻り、Carlanさんについて調べて回ることにしました。 「彼かぁ……。あいつはとても良い奴だ。 なにしろ、大戦後、ここはダボイ肺炎というやっかいな病気が猛威を振るってな。少なからず、その治療に自費をはたいてくれたのだ」 「自分のお金を……」 「あぁ、おかげで、わたしの娘も立ち直り、今じゃ、わたしに孫までいる始末」 (まるでダボイ肺炎を治す為に、不正をしたような感じ……) (Carlanさんの家に何か手がかりになるものがあるかも……)
(とっても片づいてる……。 本棚には……難しくって何の本だか分からない……) 「そこで何している」 「!!」 Tubomiは思わず、棚にあった小さな額を床に落とした。 ガシャーン! 「ご、ごめんなさい」 Carlanは顔を歪めて、ガラスの破片と共に落ちている一枚の紙を拾った。 そこには、少女の肖像が描かれている。 「それは……」 「わたしの娘だ。生きていれば、今頃Ryokoと同じ歳になっているころか……」 「まさか、ダボイ肺炎で……」 Carlanは目を半眼にしてTubomiを見た。 「20年前の利益って……」 「誰からその話を聞いた」 Tubomiは首を左右に振った。 「それは言えないです。それと、Ryokoさんのお父さんの死と関係しているんですか?」 Carlanの口元がかすかに笑った。 「君がここに来て、わずかしか経っていないって言うのに、そんなところまで知っているのか。 それとも、ここに来る前から知っていたのか? だから、ここに現れたというのか?」 「なんのこと……?」 「Londがここにやってきた」 「お父さんが……?」 Carlanはあたりに注意を払った。 「ここでは、誰が聞いているか分からない。場所を移そう」
(それにしても、娘は大きくなったな……。 一体、どれぐらいの間合っていなかったのだろう……) Londは眉間にしわを寄せた。 (それより、娘がRyokoと一緒にいたとは……。 それ以前に、Perdelを殺したのがわたしだと……? 一体、どうなっているのだ……) 「あなたがLondさんだね」 「ん?」 「ぼくはこういうものです」 CrioはLondに名刺を渡した。 「ウィンダスの特ダネ編集社の……。一体、何のようだ?」 「あなたに、確認したいことがあってね」 「なんだ?」 「奴をやったのは、あなたなのかどうかを……」 Londは顔を動かさずに、あたりに視線を向けた。 「こんなところで話す内容じゃないな」 「これでも遠回しに言ったつもりだけど?」 Londはにやりとした。 「いや、わたしではない」 「あなたの娘さんに、Carlan氏の事を調べて貰っているんだ」 「Carlan? 娘?」 Crioは頷いた。 「20年前のことをね」 「娘に余計なことを吹き込んだのはおまえだったのか!」 「おっと、声が大きいよ」 Londは辺りを見回した。 Crioは小声で言った。 「余計なことと言っても、ぼくはPerdelを殺したのは、もしかしたらあなたじゃないかと、娘さんにちらつかせただけ」 「十分余計なことだ。 ……それより、Carlanと20年前とは、どういう事だ?」 Crioは笑った。 「おいおい。なんてお気楽な人なんだ。 20年前、Carlanは多大な利益を得ている。おそらく、不正な利益だ。それを巡って、Perdelが殺されたというわけだ」 「Carlanが……。そんなことを……」 「それ以外は、とても誠実な人なんだが」 LondはCrioをじっと見つめた。 「な、なんだい?」 「いったい、なぜこんなことを調べている?」 「ぼくは一個人として調べている。 Carlan氏は、3国でも有名な人物だ。その彼が過去に、こんな事を起こしていたとなれば、大きな話題になるし、記事になる。 ぼくは、その記事を書いて、引退しようかと思うんだ」 「そなたが引退しようがどうしようが関係ない。 Carlanはわたしの古い親友だ。笑い者にはさせたくない」 「古い親友のPerdelが、君の言う古い親友に殺されてもかい?」 「いいかい。世の中には、虚偽と真実しか存在しない。我々記者には、そのうちの真実しか見ない。万人は、虚偽より真実を望む。たとえ、それが親友だったとしても、見逃すことは出来ない」 「……分からないことがある」 「ん? なんだい?」 「なぜ、そんなことを知っている? 不正な利益。Perdelをわたしがやったこと。 まるで、現場にいたようなセリフだな」 Crioはにやりとした。 「まさか、ぼくまでも疑っているのかい? それは誤解だ。有力な情報を手に入れたので、調べてみたんだ。えっと……」 Crioは自分の革袋をのぞき込んだ。 「おっ? 特ダネ編集社のLSに何か会話が……。 ちょっと、席を外すよ」 Crioは酒場から出て行った。
「Face。ようやく来たか」 「待たせたな」 「あれから二人の様子はどうだった?」 「TubomiはあれからCarlanの所に向かった」 「Carlan……」 「お前も疑いだしたのか?」 「あぁ、先ほど、Crioと言う特ダネ編集社の者から色々と話を聞いた」 Londは鋭い視線でFaceを見た。 「おまえ、このことを知っていたのか?」 「知っていた……」 「なぜだ。 なぜ、知っていて、わたしをCarlanに合わせた?」 「……奴の反応を知りたかった」 「反応だと?」 「Perdelをやったのであれば、反応があるはずだ」 「……それにしても、20年前と言えば、ボストーニュ事件は関係しないか?」 「ボストーニュ事件?」 Faceは眉間にしわを寄せた。 「上の命令でお前とPerdelがサンドリア城内に忍び込んだ時、Perdelが捕まったことあったな」 「そう言えば、そんなことあったな」 「バストーニュ監獄は、一度入れば、脱獄しても死ぬまで追われ続けることで有名だ」 「確か、お前が助けたんだったな」 「あぁ。そのおかげで、Perdelは死ぬまで追われ続けることになるのだが。 Carlanにしてみれば、Perdelは放っておけば、そのうち死ぬ存在。わざわざ自分の手を汚す必要はなくなる」 「…………」 「Carlanにとっては、Perdelは早くに死んで欲しい存在なのか?」 「……確か、彼には娘がいたな」 「娘……。病気でなくなったという……」 「さっき、バストゥークにいる仲間から連絡があった。 CarlanがTubomiちゃんを連れて、バストゥークを離れたそうだ!」 「!!」 「これは危険な前触れだぞ」 「飛空艇とチョコボを乗り継いでいけば、今からでも間に合うか」 続く……。 |