第11話「誰の為に風車は回る」 (03/06/04) |
「Face……。なぜここに?」 Faceは崖の上を指さした。 「上からおまえの姿を見たのでな。懐かしくなって降りてきたのさ」 「そうか……。それにしても、おまえの顔を見るのは何年ぶりだ?」 「20年近くはするか? それより、その墓は?」 Faceは墓へ視線を送った。 「あぁ、彼女の墓だ」 「そ、そうか……。亡くなったのか……」 Faceは顔を沈め、落胆した。 「わたしの不注意だ……」 「…………」 「二人で、旅を初めて2年目だったか……。狩りに出かけて、すぐのことだった……。モンスターの来ない安全地帯で待たせたのだが……」 「そうか……」 Faceは墓の前に歩み寄った。 「花を供えて良いか?」 「――断る理由がどこにある?」 Faceは墓の前に花を添えた。 その時わたしは、Faceの力強く握った拳が震えているのを見た。 (Face……。なぜそこまで感情的になっているのだ? 彼女を守りきれなかったわたしへの怒りか? それとも……) Faceは立ち上がり、Londに体面を向けた。 「それより、砂丘で彼女によく似た女性を見かけた」 「……そうか」 「やはり、……そうなのか?」 「あぁ、娘だ。……そうか、もうそんなところまで来ているのか」 「会いに行ってやらないのか?」 「わたしが迎えに行かなくても、きっとわたしの元へやってくるさ」 「娘が来るまで、どうしているつもりだ? こんなところで哀愁に浸っているわけではあるまい?」 「わたしは……、妻との約束を何一つ叶えてやれなかった……」 「約束?」 「わたしはその約束を守るために、旅を続けている……。そう、娘と一緒にいた時も」 「…………」 Faceは話題を変えた。 「そう、Carlanがミスリル銃士隊の副隊長になったそうだ」 Londは驚いた。 「そいつは凄いな。黄金街道を歩くのは、あいつぐらいだな。……いつの話だ?」 「つい最近の話だ。たまには顔を出してやったらどうだ。明日にでも」 「あぁ、そうだな……。明日は……21日だな……」 「それが、どうかしたか?」 「21日というのは厄日でな」 「厄日?」 「Perdelが亡くなったのが21日。それから始まり、妻が亡くなったのも、娘と別れてしまったのも21日だ」 「…………」 「何か、不吉な予感がしてならない……」 FaceはLondの肩に手を載せた。 「考えすぎだ。気にするな」 「なら、いいのだが……」
「やったぁ〜、バストゥークに着いた〜」 Tubomiは喜んだ。 「ご苦労様」 TubomiはRyokoに意味ありげな視線を送った。 Ryokoは笑った。 「これから、この街のことに詳しい人に会いに行くんだけど、一緒に行く? お父さんのことで何か知ってるかもしれないよ」 「うん、行く!」 TubomiはRyokoの前で喜んだ。 「その人、Carlanって言って、昔貿易関係の仕事をしていたから、他国の情報にも詳しいはず」 「期待しちゃおうっかな」
「じゃぁ、ちょっとここで待ってて」 「うん」
「Tubomiちゃんのこと、話しておいたから、入って良いよ」 そこにいたのは、お父さんよりちょっと年上ぐらいのエルヴァーンの男性でした。この人がCarlanって言う人みたいです。 「君がTubomi君か……」 「はい、そうです」 CarlanはTubomiをじっと見た。 うぅ……、こ、こわいよ……。 「……君のお父さんの名前はなんて言ったかな?」 「Londって言います」 「そうか……」 「ここで、お父さんが来たって言う手がかりとか、ありませんか?」 「……手がかりと言うほどではないが、わたしはある意味、君のお父さん――Londの知り合いでね」 「えっ? お父さんの?」 「君は母親によく似ているな……」 Tubomiは照れた。 「もともと、君のお父さんとお母さんは、ここの出身だった。二人は幼なじみでね」 「そうだったんだ」 「それゆえ、お互いの気持ちが交わることがなかったのだが……」 Carlenは視線を落とした。 「? どういうこと?」 「いや、これはわたしの口から言うことではないだろう。父親にあった時、ゆっくりと聞いた方がいい」 どういうことなんだろう? 「Tubomiちゃん、わたし、出かけてくるね」 「どこいくの?」 RyokoはTubomiに複雑な笑みを浮かべた。 Ryokoさん、その微笑み、前にも見せたことあるよね。 なにか、わたしにだけには言えないことを隠してるの? Ryokoは部屋から出て行った。 「Ryokoのことが気になるか?」 TubomiはCarlanを振り返った。 「あの子は、つい最近まで行方不明だったんだ」 「行方不明?」 Carlanは頷いた。 「もともと、バストゥークで家族と暮らしていた。だが、彼女が6歳の時、忽然とその姿を消した」 「どうして?」 「……理由は分からないが、その姿を消した日に、父親が亡くなっている」 「Ryokoさんのお父さんが? 病気?」 「……殺されたのだ」 「殺された……」 そうだったんだ……。だから、父親の話題になると、悲しそうな顔をするんだ……。 「そして3年前、コンシュタット高地にいるところを、わたしが発見した」 「ここに来る途中に通ったところだ……」 「風車が回っていただろう」 「うん。いっぱい風車が回ってた」 「Ryokoを発見した時、無風で風車は回っていなかったのだが、Ryokoと向かい合った瞬間、止まっていた風車が動き出しのだ」 「ちょうど、風が吹いたのかな?」 「そうかもしれない。……その時の彼女から、とても強い意志という気配を感じた。風車は、まるでその意志が動かしたように感じたのだ」 「う〜ん……。わたしにはよく分からないなぁ」 Carlenは笑った。 「いや、気にしないでくれ」 「でも、3年前って、お父さんと別れ離れになった時期だ」 「そう、なのか?」 Carlenは複雑な顔つきでTubomiを見た。 Tubomiは首を傾け、にっこりと微笑んだ。 「わたし、お父さんを見つけるから。昔のことは気にしない」 「そうか……」 「お父さんのこと知っている人がいるかもしれないから、外へ行ってくる」 「そうか、Ryokoもそのうち戻ってくるから、また来なさい」 「はい」 「Tubomiの背中を見ていると、あの時のRyokoを思い出す。 何か、動いてはいけない風車が動き出してしまった、そんな気がする。 なにか、不吉なことが起きなければよいが……」 続く……。 |