第10話「バルクルム砂丘の白い砂」 (03/05/18)
ウィン脱出!

 わたし、ウィンダスから離れることにしました。
 Ryokoさんがバストゥークへ向かうそうなので、わたしも一緒に着いていくことにしたのです。

ブブリム半島

 昨日、Matos君を連れてやってきたタロンギ大峡谷から東へ行くと、ブブリム半島と言うところへ出ます。
 タロンギからこの半島へ入ったばかりは、とても地形が複雑で、一人で歩くにはとっても怖いところです。

マウラ

 このブブリム半島の南端に「マウラ」と呼ばれる小さな港街があります。
 ここから、船に乗って「セルビナ」と呼ばれるマウラと同じぐらいの大きさの港街へ行くことができるんです。
 つまり、ウィンダスがあるミンダルシア大陸から、サンドリア、バストゥークがあるクォン大陸へ渡ると言うことです。
 凄いでしょ? わたし、海を挟んで大きな旅をしているんです!

船旅

 今はこうして、Ryokoさんとセルビナへ向かっている最中です。
「それじゃ、父を捜して?」
「うん。お父さん、きっとどこかの国にいると思うんだ」
「連絡はつかないの?」
「たまにお父さんから手紙が来ることがあるよ」
「娘の所在が分かっているって言うのに迎えに来ないなんて、酷い父親ね」

悪くないもん

 TubomiはRyokoを怒った。
「お父さんは悪くないよ! お父さん、強くなったら向かえに行くって言ったもん」
「あぁ、ごめんなさい。でも、Tubomiちゃんは父思いね」
「Ryokoさんだってお父さんのこと、大事にしたいでしょ?」
 わたしのその質問に、Ryokoさんは寂しそうな顔をしました。
 その表情、どこかで見たことがあるような気がしました。
「そろそろセルビナだよ」
「うん」

セルビナ

 セルビナに到着しました。
 ここは、とっても日差しが強く、暑いところです。
「ここが、3国の中継点って所ね。北に行けば、サンドリアへ行くし、南へ行けばバストゥークへ行ける」
「Ryokoさんがいなくなったら、一人で行かなくちゃ行けないんだね」
「まぁ、そうねぇ」

釣りポイント

 Tubomiは辺りを見回した。
「そう言えば、ここ、来たことある」
「お父さんと?」
「うん。お父さん、この海岸でいつも竿を折ってた」
「竿を折る?」
「その度に見せるお父さんの表情が面白くって、飽きずに見てたのを覚えてる」
「大物過ぎたのね?」
 (ちなみにLondの釣りスキル0)
 それ以上に印象的なことが、この近くであった気がする……。
「どうかした?」
 RyokoはTubomiを怪訝な顔で見た。
「白い砂」
「白い砂?」
 Tubomiは頭を左右に振った。
「ううん。なんでもない」
「ならいいんだけど。……行こっか?」
「うん」
 こうして、わたしはセルビナを後にしました。

バルクルム砂丘

 セルビナを出たところは、バルクルム砂丘という場所。周りは砂だらけです。時々、砂嵐や、熱風が吹き荒れる、冒険者の難所だそうです。

これ?

 RyokoはTubomiの胸元を指さした。
「ねぇ、そのネックレス」
「あっ、これ?」

またウサギ!?
どか!

「きゃぁ!」
 Sand HareはTubomiのネックレスを奪った。
「あっ、ネックレス!」

まってぇ〜!

 TubomiはSand Hareを追いかけた。
「お母さんのなんだから、返して!」
「ちょ、ちょっと!?」


うぅ……
「うぅ、見失っちゃった……」
?

「あれ?」
 Tubomiは辺りを見回した。
「Ryokoさん?」

うっ、うっ

「うっ、うっ。大事なネックレスもRyokoさんもいなくなっちゃった……」

――その頃Ryokoは――
ばたり

 RyokoはSand Hareを倒した。
「Tubomiちゃんは見失ったけど……」
 RyokoはSand Hareの側に落ちていたネックレスを拾った。
「このネックレス……」


ポツン

 わたし、思い出したことがあります。
 昔、今と同じようにここで迷子になった事がありました。
 こうして、じっと待っていれば、あのときのようにお父さんが迎えに来るような気がしたんです。

ガサ……

「おい、大丈夫か?」
「お……とうさん?」

でん!
「!!」

「おいおい、人の顔を見るなり驚かないでくれ。こう見えても、悪い奴じゃない」
「うぅ……」

こわそう……

 男はTubomiをじっと見つめた。
「あの、わたしの顔に何かついてますか?」
「いや、すまん……。それより、一人こんな所で、何をしているんだ?」
「お友達とはぐれちゃって……」
 男は神妙な顔で考えた。

あっちの方だ

「そうだな……。この先にOutPostがある。あそこなら、友達とやらが探しに来るかも知れない」
「じゃぁ、そこへ行ってみます。ありがとうございました」
「あぁ、気をつけるんだぞ」
「すいません」
 ちょっと怖そうな人だったけど、優しい人でした。
 その人が指さした所へ行くと、OutPostがありました。ここなら、人もいるし、安心して待ってられそうです。

――しばらくして――
見つけて貰った

「こんな所にいた」
「Ryokoさん!」

うっ、うっ

「一人で勝手に行っちゃうんだから」
「だって、大事なネックレスが」
 RyokoはTubomiにネックレスを渡した。

やったぁ

「わたしが取り返してあげたわ」
「ありがとう!」
 Tubomiは喜んだ。
「それより、それって……?」
 Tubomiはネックレスを見た。
「これ、お母さんの形見なの」
「……そう、亡くなったの」
「わたしのお母さんは、わたしを産んですぐに病気でなくなったの。そのお母さんの遺品で、唯一残っているのが、このネックレス」
 TubomiはRyokoにネックレスを見せた。
「物心付いた時からこれを身につけていたけど、いつもこの時期、この砂丘にやってきて、お父さんはわたしの首からこのネックレスを外すの」

こうしてすくうの

 Tubomiはネックレスを持った手で砂をすくった。
「こうしては、砂をゆっくりこぼすんです」
「白い砂……」
「そう。月明かりに照らされて、砂が白く輝くんです」
「綺麗ね」
「わたしは綺麗とは思わない」
「どうして?」
「わたし、この時のお父さんの表情が嫌いなの。とっても寂しそうで。だから、毎年見る、この白い砂は嫌い」
「…………」
 そう、あの時、Ryokoさんが見せた表情が、わたしが嫌いだというお父さんの表情とよく似ていた。
 お父さん……。
 わたし、この白い砂を見るのが嫌いだけど、とっても深い意味があると思うんだ。
 だから、お父さんの代わりにこうしてペンダントに白い砂を与えてます。
 いつか、この意味が分かる時が来ますよね。

――ラテーヌ高原――
妻よ……

「妻よ……。
 おまえがいなくなって、もう、何年になるだろう……」
 Londは墓石の前に花を飾った。
「娘が、わたしを探して旅に出ているそうだ。もしかすると、おまえに会いに来るかも知れないな。
 それより、しばらくおまえにあいつを会わせていないな。
 おまえがわたしと一緒に旅をして、おまえがあのペンダントに白い砂を与えた時、とっても不愉快な気分になったが、すぐに当然だと思った。
 それを承知の上でおまえに惚れてしまったのだからな……。
 もしかすると、わたしの代わりに娘が白い砂を与えてやっているのかも知れないな……」

ガサ
ガサ……

「誰だ」

続く……。