第8話「Tubomiのクッキング奮闘記」 (03/04/11)
お腹空いた

「うぅ……。腹が空いた……。Mogu、マトンローストの材料はあるか?」
 Moguは金庫の中を調べた。

「ないクポ」
「仕方ない……。競売所へ行って材料でも仕入れてくるか……」
 Londは競売所へ出かけた。

高いっす

「大羊の肉、500ギル……」
 残金……380ギル。料理の勉強をしすぎてしまった……。
 Londはため息をついた。

「は、腹が空いた……」

――ウィンダス――
お腹空いた

「たまに散歩するのはいいものだ……。いつも小屋番していては体がなまって仕方ない……」
 それにしても、腹が空いたなぁ。
 Mooguは美味しそうな臭いを嗅ぎつけた。

 おっ、マトンローストを温めてくれてるのかな……。

お帰り

「♪〜」
「ただいま……」
「あっ、Moogu。おかえり〜」
「料理を温めてくれたのか?」
 Tubomiは首を左右に振った。

「ううん。料理作ってるの」

何!

「な、何!?」
 こ、殺される……。
「ちょ、ちょっとそのフライパンの中身を見せてくれ……」
「うん、いいよ。つまみ食いしちゃダメだよ」
 Mooguはフライパンの中身を見た。

 わたしはその中身を見て驚愕した。
 大羊の肉とマウラにんにく、臭みを取る乾燥マージョラムに混じって、炎クリスタルがフライパンの中で踊っていたのだ。
「な、なんだこれは!」
 Mooguは炎クリスタルを指さして叫んだ。

「えっ! だって、貰った料理レシピに書いてあったんだもん!」
 Mooguは脇にあった料理レシピ表を見た。

「マトンロースト。材料、大羊の肉、マウラにんにく、乾燥マージョラム、炎クリスタル……。調理手順が書いてないじゃないか! そもそも、炎クリスタルがある時点でおかしいと気づかなかったのか!?」

気づいたもん!

「そりゃ、わたしだって気づいたよ!」
「気づいた時点で怪しめ!」

うっ、うっ……

「うっ、うっ……」
「頼むから、こんな事で泣かないでくれ……」
 MooguはTubomiを慰めた。

「一人で何でもやろうとする気持ちは分かる。だが、分からなかったら、誰かに訊くことも肝心だ」
「うぅ……。一人前になりたいよ〜」
「ちなみに、このレシピ表は調理合成の表だ」
「調理合成?」
「クリスタルを材料にして、食事を作るものだ」
「あっ、お父さんがやってた」
「調理合成は、成功か失敗しかないから、安心して食事が出来るぞ」
「安心して?」
「い、いや……、なんでもない」
 って、今回の話はコラムの続きか……?


パリーン
パリーン
パリパリーン
パリーン
うっ、うっ

「うっ、うっ……」
「だから、こんな事で泣かないでくれ……」
 MooguはTubomiを慰めた。

「いったい、何を作ろうとしているのだ?」
 Mooguは合成レシピを見た。

「マトンロースト……。なぜそんな高LVの物を作ろうとするかな……」

だって美味いでしょ?

「だって、お父さんが好きな料理だもん」
「…………」
 TubomiはMooguを怪訝そうな顔で見た。

「どうしたの?」
「誰に食べさせるつもりだ?」
「お父さん」
 珍しく料理をしていると思ったら、父親のために作っていたとは……。
「野兎のグリルじゃだめか?」
「だめ」
 即答してくれるな。
「しかし、調理合成じゃ、いくらやってもマトンローストは作れないぞ」
「じゃぁ、手料理にする。その方が、お父さん喜んでくれるよね」
「……どうだろうな」

 Tubomiが料理に奮闘している頃、Londはゲルスバで戦っていた。

金出せ!

「とりゃぁ!」
 低LVでの金稼ぎにはもってこいのゲルスバ。金がなくなったら、こうしてオーク狩りを続けるLondだった。しかし、今日のLondはいつもと違った。

助太刀するぞ

「ちょっと待て! 多勢に無勢とは卑怯な!」
 Londは腹が減って力が出ない。

「くそう……。空腹じゃなければ……」

無慈悲な!
「弱い者いじめは、いけないんだぞぉ!」
ぐはぁ!
「ぐはぁ!」

ぬぬぬ……

「くそう……。これではまともに戦えない……。野兎のグリルでも良いから食べに行くか……」


出来た!

「出来た!」
 Tubomiは出来た料理を見て喜んだ。

「どれどれ、わたしが毒……」
「どく?」
「いや、味見をしてやろう……」
 Tubomiは出来たマトンローストをMooguの前から遠ざけた。

「だめ。お父さんに食べさせるんだから」
「そ、そうか……」

すまん……

「Lond殿……。娘と会う前に死ぬんじゃないぞ……」
「何のこと?」


速達

「御主人様。美味しい物が届いてるクポ」
「美味しい物?」
 MoguはLondにマトンローストを手渡した。

「Tubomiちゃんからだクポ」
「おぉ! これはマトンロースト!」

感動したぞ!

「娘が、わたしのために作ってくれたというのか……」
 Londはマトンローストをよく観察した。

「しかし……、妙に焦げ目が多いのは……、もしかして手料理か。とにかく、腹が空いて仕方ない。早速戴くとしよう」
 Londはマトンローストを一切れ口に入れた。


こ、これは!

「この味は……」
「どうしたクポ?」
「とても懐かしい味がする……。そうだ……。妻の手料理の味だ」
 Londはしみじみとマトンローストを食べ続けた。

「そうか……。母親のことを覚えていなくとも、似るところは似るのだな……」

しかし……

「それにしても、INT-8という桁違いのダウンはなんだろう……」
 Londはふいに額から汗が流れるのを感じた。

「どうしたクポ?」
「Moguよ……。この家にトイレという物はあったか?」


食べてくれたかな?

「お父さん、美味しく食べてくれたかな?」
「あ、あぁ……。しかし、もっと料理の腕を上げて、さらに美味しく食べて貰った方が喜ぶと思うぞ」
「うん! お父さんのために、頑張る!」
「わたしの為にも頑張ってくれ……」


うう……

 その日、共同水場の前で倒れているLondの姿を目撃した人がいたと言う……。

続く……。