第7話「Mooguの心が揺らいだ時」 (03/03/31)
今日はわたしが主役だ

 わたしの名はMoogu。
 あれからTubomiは、毎日のように鍛錬に励んでいる。まぁ、たまにはウィンに逃げ帰って、ここで泣いている時もあるのだが。
 そんな彼女の泣いている姿を見ると、本当に旅に出して良かったのかと、ふと自問してしまう時がある。
 そんな彼女との出会いは、時をさかのぼること3年前。今以上に幼さが残る顔立ちをしていたのを記憶している。

なんだ? Moogleだと?w

 当時、わたしはウィンダスの数少ない騎士をしていた。入団しての時は、とても言語に気を遣った。サンドリアで騎士試験を受ける時が特に酷かったが、Moogle族の騎士は少なく、Moogle語を喋る我々はとても馬鹿にされた。その事もあり、こうして標準語を喋るようになった。
 ウィンダスの騎士として、一段ずつ階段を上がり、ある時一つの任務に就いた。それは、ダボイでオークどもに強制労働させられている民間人を救い出すというものだった。
ダボイはやっぱ恐ろしいところ

 ダボイといえば、凶悪なオークどもが徘徊する恐ろしい場所だ。ウィンダスの魔道士と騎士からなる11人の衛兵と共に、団長のわたしはそのダボイへやってきた。
 ダボイの奥地で見たものは、オークどもの小屋やシューターを組み立てている人たちだった。確認した種族は、ヒュームとガルカ。エルヴァーンやタルタル、ミスラは、それぞれ自尊心の強い、体力がない、脱走しやすいことから労働には向かないと見たのだろう。奴らの知識の高さが窺える。

部下よ、がんばれ!

 わたしたちはそこで、強制労働をさせられている人々を助けるため、オークどもと戦った。
 強制労働させられた人々を逃がしながら、そしてかばいながら戦い、団員たちが一人、また一人と倒されていった。
 強制労働者に犠牲も出たが、ダボイから逃げ出した頃合いを見計らって撤退試みた時、既に団員の数は3人になってしまった。
 追っ手から団員を守るため、後尾にいたわたしは、ふいに飛んできた矢を受け、谷底に落ちてしまった。重傷を負ってしまったが、谷底に落ちたおかげもあって、オークに追われることもなかった。

谷底。この奥へはソロでは怖くて(滝汗

 戦いの傷と、谷底に落ちたショックのため、その場から動けずにいたわたしは、体力の回復するまで待った。
 どれぐらい時間が過ぎただろう……。川の水をかき分ける音がした時、わたしは覚悟を決めた。もう、終わりだと。
 そして、わたしの前に現れた人物は、ボロボロの服をまとった幼い少女だった。
 そう、それがTubomiであり、彼女との出会いだった。
「一緒に逃げよう?」
 それが彼女と出会って、最初に聞いた言葉だと記憶している。
 彼女の服装から、共に脱走した強制労働者だとすぐにわかったが、そんな相手に逆に助けに来て貰ったことに、わたしは苦笑するしかなかった。

今日もジャグナーは雨だった

 彼女は傷ついたわたしを背負い、わたしの指示の元、無事にダボイを抜け出すことに成功した。
 わたしがウィンダス出身だと聞くと、ウィンダスまで連れて行ってあげると言ってくれた。ジャグナー、ラテーヌ、バルクルム。出没する敵はどれも強敵だ。彼女はわたしを背負いながら、モンスターの視界から逃れるように少しずつ先に進んだ。
 途中、休憩しては、HP1000程あるわたしに、彼女はケアルで少しずつ回復してくれた。そんな彼女が、とても健気に思えた。

船は良いとして、海が単色って言うのは

 セルビナからマウラ行きの船に乗り込み、そこで彼女から、父と離ればなれになったこと、そして、生きているのなら会いたいと、そう口にした。その時、初めて彼女のことを心から守ってやりたいと考えるようになった。
 マウラ、タロンギ、そしてサルタバルタを抜け、ついにウィンダスに到着した。実に、ダボイを抜け出してから、3ヶ月後のことである。

とうとう到着

 ウィンダスに着いたわたしだったが、戦いで受けた傷が深かったため、もう、剣を握れる体ではなかった。団員に多くの犠牲者を出したこともあり、責任を取って辞任することにした。
 そして、わたしはTubomiの専属の騎士として、新たな人生を送ることとなったのだ。

追いかけ回されるTubomi

 しかし、今、彼女が一人で戦っていると思うと、心配でならない。
 彼女の父親が旅することを喜んでいると言ってくれたが、わたしは旅立つことを反対すれば良かったのではないかと、今更になって思ってしまう。
 正直言って、わたしの中で、彼女の旅立ちが正解だったのか答えが出てこない。
 こうして、家の中で彼女の帰りを待っていると、また泣きながら飛び込んでくるんじゃないかと、とても心配だ。

 バタン!

新しい服!

「ねぇねぇ、見てみて。新しい服を着られるようになったよ!」
 うれしそうに飛び込んでくる彼女を見て、わたしは思わず顔をほころばせた。
 やはり、旅に出して正解だったかもしれない……。
 なによりも、この笑顔が、そう語ってくれる。
 父親の元に一歩近づいたという、笑顔。
 今まで見せたことのない笑顔が、わたしの中にあった不安を吹き飛ばしてくれた。
 この笑顔が絶えない限り、わたしは彼女を見守っていよう。

続く……。