第6話「おれんじじゅーす」 (03/03/25) |
「ご主人様。周りをウロチョロすると、気になって仕方ないクポ」 「あの手紙に、あんなことを書いたものの……、心配でならないのだ(第5話参照)」 「じゃぁ、会いに行けばいいクポ」 「とはいえ、先の手紙に、あんなことを書いてしまった手前、会いに行くのも……」 「崖まで追い込まれて、ベヒーモスに睨まれた気持ちクポ?」 「まぁ、そんなところだ……」 Londはふと考えた。 「ウィンと言えば、調理ギルドだな……」 ステータス→合成スキル 「調理スキル19(見習い)か……。試験を受けに行かなくてはならんな……(次はゆでがにを狙っているからな)」 Londは気合いを入れた!! 「よし、Tubomiを遠くから見るついでに、調理ギルドへ行こう!」 「調理ギルドへ行くついでに、じゃないクポ?」
「さて、娘はいったいどこにいるんだ……」 LondはTubomiを探して走り回った。 「娘が見つからない……。いったい、どこにいるのだ……」 Londは悩んだ。 「とりあえず、ギルドで試験を受けてからにしよう……」 「豆のスープの材料をもらえないか」 「おや、あんたLondじゃないの」 「ん? なぜわたしの名前を知っている」 「そりゃ、Tubomiちゃんが探してるからだよ」 「娘が……」 「Tubomiちゃんを連れ戻しにきたんだろう?」 「わ、わたしは……」 「違うって言うのかい?」 「娘を……、遠くで見るだけだ……」 「本当にそれだけかい? どこから来たか知らないけど、なんでわざわざこんなところまで来たんだい。娘に会いたかったからだろ!?」 「……その通りだ! 娘に会いに来た! 娘に会って、力一杯抱きしめてやりたい! ……でも」 Londは落ち込んだ。 「わたしにはそんな資格がない……」 「資格?」 「わたしは、オークに妻だけではなく、娘までも奪われた……。もう、そんな惨めな思いをしたくない……」 「どういうことだい? 妻って?」 「わたしの妻は、オークによって殺された」 「でも、Tubomiちゃんからは、病気で亡くなったって聞いてるけど」 「Tubomiを守るために、母が犠牲になった、とは言えないだろう」 「…………」 「生涯で、二人の愛する存在を、目の前で奪われたのだ。そう、わたしの不甲斐なかったがために」 「…………」 「だから、今は娘に会うことはできない。もっと、力をつけて、会う資格が持てたその時、娘に会いにくる」 「Lond……」 「そうだ。サルタオレンジを4つ頂けないか?」 「あぁ、はいよ……」 ギルドの主人はLondにサルタオレンジを4つ売った。 「ちょっと待っててくれ」 Londは合成をした→オレンジジュースができた。 「これを娘にやってくれ」 「オレンジジュース?」 「あぁ。昔、娘に『おれんじじゅーす』とせがまれ、よく作ったものだ」 「あぁ。わかったよ」 「わたしがここに来たこと、娘には黙っててほしい」 「あぁ……」 「ここに来ることがあっても、娘を探しに来ることはしない。……では」 Londは調理ギルドから出た。 「あんたは、十分強い。弱いのは、あんたの心だ。大事な人を奪われる畏れが、自分を弱くしているんだ。それに気づき、克服した時こそが、娘と会える資格が持てた瞬間だ」
「乾燥マージョラムを12個、ください」 「おや、いままでどこへ行ってたんだい?」 「うん、ちょっと東の魔法塔に行ってたの」 「遠出するね。……はい、乾燥マージョラム」 ギルドの主人はTubomiに乾燥マージョラムを12個売った。 「あぁ、あと、これ」 ギルドの主人はTubomiにオレンジジュースを渡した。 「オレンジジュース? くれるの?」 「あぁ。飲んでごらん。おいしいよ」 「うん」 Tubomiはオレンジジュースを飲んだ。 Tubomiはポロポロと涙をこぼして泣いた。 「どうしたんだい?」 「わからない……。でも、とっても懐かしい味がする……」 「そりゃそうだ。なにしろ、『おれんじじゅーす』だからね」 続く……。 |