第5話 「時には桜のように……(後編)」 (03/03/16) |
「ご主人様、速達が来てるクポ」 「速達? それこそ珍しいな」 Londは手紙を読んだ。 「な、なんだって!」 「ど、どうしたクポ!?」 「娘が、わたしを捜して旅に発つそうだ……」 Londは手紙の続きを読んだ。 「そ、そうか……。自分の名前にコンプレックスを感じていたのか……」 「Tubomiちゃんの名前って、良い名前クポ」 「娘にとって、嫌な名前なんだろう……」 Londは眉をひそめて悩んだ。 「Moguよ。ペンとインク、あと紙を用意してくれ」
「Tubomi……」 「あっ、Moogu……」 「こんな所にいては、風邪を引くぞ」 「わたし、お父さんが来るの、待ってようかな……。お父さんだったら、きっとすぐに強くなって、迎えに来るよ」 「お前さんのお父さんは最強じゃない。頂点に登り詰めるというのは、並大抵の努力が必要だ」 「…………」 「父親が迎えに来るのは、当分先だ。それでも、待ち続けるつもりか? お前が望む物は何だ。一時の幸せか? それとも、永遠の安らぎか?」 「……わたしには、お父さんしかいなかった」 「…………」 「わたしのお母さん、わたしを産んですぐに病気でなくなったの。物心ついた時には、お父さんと旅をしてた。お父さんの料理、とても美味しかった」 「お前さんにとって、父のそばとは、ここより過ごしやすい所なんじゃないのか?」 「うん……、もちろん分かってる」 MooguはTubomiに手紙を差し出した。 「……お父さんからの手紙だ」 わたし、もう少し頑張ってみようかな。 昨日のお父さんの手紙には、こんな事が書いてありました。
「お前がわたしを捜して旅に出ることを知って、正直驚いている。
あと、お前の名前について話しておこう。
「Moogu、さくらって?」
「もし、Sakuraと名付けたのなら、お前は桜のようにいつまでも華やいでなくてはならない。お前にはそんな疲れる人生を送って欲しくない。
「わたし、負けない!」
「もう、旅から、逃げたりなんかしない!」 「だって……。わたし、お父さんを捜す旅に出れば、きっと桜になるんだもん」
「わたし、Tubomiって名前、好きになれそう……。だって、お父さんが付けてくれた名前だから」 続く…… |